dods’ blog - 今と昔のノートブック

今の記録は情報提供。昔の記憶は話題提供。気ままに記します。

段落とパラグラフ

20年以上も前のこと。英語の文章の書き方をカルチャーセンターの講座で受講したところ、思っていた以上に勉強になった、というか開眼に近い体験をしたことがあります。記事にもしました。

あの記事は、講師のアメリカ人G先生から受けた影響が話題の中心でした。今回は、その時使われたテキストの紹介と、ちょっと実践的な話もしたいと思います。当時のテキストなんてもう売ってないだろうと思ったら、しっかりアマゾンにありました。

Practical Stylist

Practical Stylist

 

 今読んでもかなり硬い内容のテキスト。でも英文のスタイルについて微に入り細に入り説明してくれています。各章には、かなり手ごわい読み物(第一章はローマ帝国文人キケロから)も。G先生によると、アメリカの程度の高い高校用の教科書とのこと。

 興味のある方はぜひ現物にあたってください。私は「伝えたいことがあって書かれる英文は必ずある種の構造で書かれている」と「英文の構造の基本になるのは一つのパラグラフがどんな構造をとるかを理解することだ」の2点を学びました。

エッセイとか論文レベルの英文を書く必要のなかった自分にとって、一つのパラグラフの構造をまずは極めようと、clarity(明晰さ)とかcoherence(首尾一貫性)など、テキストのキーワードを一つひとつ確認した記憶があります。

そういう目で英文を眺めると、説明文は決まってあるパターンで書かれていることが分かってきました。決め手はパラグラフ全体をカバーするいわゆるトピック・センテンス。上手なトピック・センテンスで始めることがいかに大事かを学びました。

G先生曰く、こうしたトレーニングをアメリカでは小学校からやっている。残念ながら小学校時代、作文は書かされましたが、段落の構造を教わった経験はありません。そもそも日本語の段落はただ一字下げるだけの、パラグラフとは別物なのでしょうか。

余談ですが、ちょうどこの講座を受けていた頃は「『NO』と言える日本」(盛田 昭夫 , 石原 慎太郎著)がベストセラーでした。G先生曰く「文章がめちゃくちゃ」。

なんか、理屈っぽい話が続きました。視点を変えて、実際の英文でこの話を検証してみましょう。今日の米紙をいくつか見ていて、いい例が見つかりました。ボストングローブ紙に掲載されていた記事です。

報道記事ではく、ハーバードとイェールの法学部長二人によるオピニオン記事。タイトルのStanding up for 'so called" law(「いわゆる」法を擁護する)は、ご存じのとおり、大統領令を連邦控訴裁に退けられたトランプ大統領が「いわゆる判事(so-called judge)」という表現を使ったことの、当てつけもしくは対抗でしょう。

中ほどに典型的なパラグラフが見つかったので引用しました。一つ目の文章がトピック・センテンスとしてピシッと機能しているのがおわかりでしょう。

Now Trump is attacking anyone who calls him to account — senators, scientists, the civil service, the media, and the Democratic Party, to name a few. His approach divides the world between friends and enemies, vividly reminding us of the political philosophy of notorious theorist Carl Schmitt. Politics, Schmitt said, was an existential struggle for survival that requires us to destroy those who oppose us. It is no surprise, therefore, that Trump tells us that he is in a “running war” with the media, and that Trump’s trusted adviser, Stephen Bannon, instructs the press to “keep its mouth shut and just listen for while.” 

(拙訳)今トランプは自分の責任を追及する者に対して手当たりしだいに攻撃を仕掛けている。少し挙げるだけでも上院議員、科学者、政府職員、メディア、民主党等々。世界を敵と味方に分断するその手法は、悪名高い理論家カール・シュミットが表した政治哲学を鮮やかに思い起こさせる。 シュミットによれば政治とは生き残りを懸けた生存競争であり、異を唱える者は打ち砕く必要がある。それゆえ、トランプがメディアとは「戦争中だ」と言って何ら不思議はなく、トランプが信頼する上級顧問のスティーブン・バノンが報道に対し「しばらく口をつぐんでただ話を聞くといい」と指示したことも驚くにはあたらない。

気になる方はぜひ全文をお読みください。それにしてもトランプ大統領のツイッター好き、分かるような気がします。言いたいことを一文だけ。理由も具体例もなし。反証を挙げる必要もなし。でも、一国の大統領が頼りにすべきメディアでしょうか。